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東京三菱UFJ銀行が仮想通貨「MUFGコイン」の発行を実験

はじめに

2016年2月1日に日本最大の銀行である東京三菱銀行が、ビットコインの基本技術であるブロックチェーン技術を応用した独自の仮想通貨「MUFGコイン」を発行することを発表しました。

MUFGコインはビットコインや従来型の電子マネーの両方の性質を持つ“独自通貨”です。東京三菱銀行がMUFGコインの発行を計画する主な理由として、コスト削減が考えられます。

もしもMUFGコインの流通が開始すると従来型の電子マネーのように決済に利用できるほか、個人間でもコインの受け渡しができるようになります。決済・送金コストが大幅に安くなる可能性があります。

MUFGコインについての発表内容と銀行が発行する仮想通貨とは

東京三菱銀行は、2017年秋頃を目標に独自の仮想通貨「MUFGコイン」の発行を計画していることを発表しました。この仮想通貨の特徴として、ビットコインで用いられているブロックチェーン技術を使用した分散型元帳管理システムを活用すること、1コイン=1円に固定すること、などが公表されています。最初に実験として行内通貨として運用を行い、実用性が確認されたら一般に公開する予定であることも発表されました。今回の発表内容は日本の銀行としては初めての試みで、銀行関係者の注目を集めています。
東京三菱銀行では発表に先立つ2016年10月に、分散台帳技術(ブロックチェーン技術)を研究・開発する企業のコンソーシアムである「R3コンソーシアム」に参加しています。R3コンソーシアムは世界中の70以上の金融機関がブロックチェーン技術を応用した金融システムの構築についての研究・開発を行うための企業連合です。東京三菱銀行もR3コンソーシアムに参加することで、分散台帳技術の活用に本腰を入れていることが伺えます。
海外の一部の銀行は、ビットコインと同様のブロックチェーン技術を活用した独自の仮想通貨の発行を既に開始しています。アメリカ合衆国ニュージャージー州に本拠を置くニューヨークメロン銀行はビットコインベースの独自の仮想通貨である「Kcoin」を作成して、実際に運用を開始しています。ただし「Kcoin」は決済用の通貨としてではなく、預金者向けのクーポンや特典ポイントとして利用されています。他にもCitiバンクやGoldman Sachs、スイス・UBSも独自の仮想通貨の発行を計画しています。
銀行ブロックチェーン技術を応用した“仮想ポイント”を発行するのは、宣伝目的以外の理由があります。

東京三菱銀行が仮想通貨技術を導入する目的とメリットとは

2014年2月に東京を本拠地とする世界最大の仮想通貨であったMT.Goxが突然閉鎖されたニュースが報じられたことをきっかけにして、多くの日本人がビットコイン(仮想通貨)の存在を知りました。このため日本国内では今でもビットコインに対してマイナスイメージを持つ人が大勢います。それでも東京三菱銀行が仮想通貨の技術を応用したコインの発行を計画するのは、それなりの理由があります。
銀行が分散台帳技術(ブロックチェーン)の仕組みを応用して新たにコインを発行する主な理由は、経費節減です。法定通貨は現金が存在しますが、流通する現金はほんの一部に過ぎません。発行済みの通貨のほとんどは、銀行のコンピュータの中で取引が行われています。法定通貨の大半は、コンピュータ内のデータだけで取り扱われる“仮想”の存在なのです。
銀行は莫大な費用をかけて、取引を行うために必要なコンピュータやバックアップシステムを構築・整備しています。災害の発生に備えて、専門の業者に委託して毎日データのバックアップが行われています。支店・ATMを接続する専用(電話)回線を整備・運用する費用もかかります。
これに対して既存のインターネット網を活用することで事務用パソコンでも運用・データバックアップが可能な仮想通貨は、格安の費用で済みます。インターネットは米国において核戦争などの有事の際に電話回線の切断を想定して構築されたシステムなので、災害に強いという特徴があります。ブロックチェーンシステムでは全てのマイナーが取引台帳のデータを保存することで“バックアップ”が行われるため、取引データが失われるリスクが極めて低いという利点もあります。常にどこかのパソコンで採掘を行えば運用ができるのでホストコンピュータを24時間稼働させる必要がなく、無停電システムも不要です。
システムの運用経費が重荷となっている銀行にとって、格安の費用で構築・運用ができる分散台帳管理システムは魅力的です。

MUFGコインの特徴とビットコインの共通点とは

東京三菱銀行の発表内容では、MUFGコインで利用するアルゴリズムや送金時間、発行枚数などについては公表されていません。それでも基本システムとして、ビットコインなどの仮想通貨で用いられているブロックチェーン技術を応用したものであることが明らかにされています。このことから、東京三菱銀行が発行するMUFGコインは既存の電子マネーのように単なる先払いのポイントなどではなく、個人間で受け渡しができる“通貨”に近いものであることがわかります。P2P方式でコインの受け渡しができる点では、ビットコインと同じです。
東京三菱銀行が仮想通貨を発行する目的として経費削減を考慮していることから、取引記録の管理・保管は従来型のホストコンピュータによる集中管理ではなく、多くの小型計算機によって行われることが分かります。ビットコインのように誰でも自由にMUFGコインの採掘作業に参加できるようになるのかは不明ですが、インターネットに接続された普通のパソコンでも運用ができる点についてもビットコインと同じです。
MUFGコインの運用が開始すると誰がコインを保有・利用できるのかという事についても明らかにされていません。それでも行内通貨として実験が行われていることや1コイン1円と発表しているため、日本円と同じように通貨として決済に利用することを想定していることが分かります。Kcoinのような特典クーポンや、リップルコインのように銀行間取引のみに利用するようなものではありません。決済や送金に利用するという点においても、ビットコインと非常によく似ています。
MUFGコインが東京三菱銀行の預金者またはそれ以外の人でも利用できるような仮想通貨として運用が開始されると、世界初の銀行が発行する仮想通貨となります。東京三菱銀行の独自通貨の発行が成功すれば、R3コンソーシアムの他の銀行も同じように独自通貨の発行を決断するきっかけとなる可能性があります。

ビットコインなどの仮想通貨とMUFGコインの違いとは

東京三菱銀行が計画しているMUFGコインは、基本的な台帳管理システムや個人間でコインの受け渡しが可能である点においてビットコインと似ています。これに対して、MUFGコインはビットコインと異なる点もあります。
MUFGコインとビットコインの最大の違いは、1コインが1円に固定されていることです。ビットコインなどの仮想通貨の価値(レート)は法定通貨と独立しているため、相場変動が起こります。これに対してMUFGコインは日本円に対して固定されています。相場が固定されているので為替変動のリスクはありませんが、投機に利用することはできません。MUFGコインが運用されたら、円建て決済や送金専用の通貨として利用されます。
これに加えてMUFGコインがビットコインや他の仮想通貨と異なる点は、コインを発行することができるのは管理者である東京三菱銀行のみで、日本円と交換する形で新たなコインが発行されることです。そのためコインの価値は発行者である東京三菱銀行や、日本円の発行者である日本銀行の信用に依存しています。MUFGコインの利用者とコインの発行者である東京三菱銀行の間には債権者と債務者の関係が成立する点で、既存の電子マネーに似ています。
ビットコインは通貨としての管理者が不在ですし、最低限のルール(発行上限や新規に発行されるコインの数量)が定められているだけで利用方法は自由です。このためビットコインはマネーロンダリングや犯罪取引にも使用されています。これに対してMUFGコインの発行数量や日本円との交換レート、コインの使用方法の利用制限などについては、発行主体である東京三菱銀行が決定することができます。
MUFGコインは日本円と引き換えに発行されるため、利用者に還元されるかどうかは不明ですが一定の利息が発生します。もしもコインと引き換えに預けられた資金の一部を銀行が第三者に融資すれば、信用創造により日本円が増えることになります。

MUFGコインの利用シーンとは

通貨の主な役割は、価値の保存・決済・価値の尺度の3つです。為替レートが日本円と固定されているMUFGコインは通貨の満たすべき条件をすべて満たしています。このため、もしもMUFGコインが実用化されたら日本円に近い使われ方をされることが予想されます。
東京三菱銀行が仮想通貨技術を導入した理由が経費節減であれば、現在よりも振込手数料が大幅に引き下げられる可能性があります。銀行の顧客以外の人の間でも利用が可能になれば、モノやサービスの代金を支払う際にも、格安の手数料で決済ができるようになります。国際ブランドのクレジットカードは決済残高に対して4~7%もの決済手数料が支払われていて、この手数料は購入代金に上乗せされています。ビットコインは決済手数料が1%程度と低いものの、為替レートの変動が激しいので利用しにくい面があります。純粋に決済に利用するのであれば交換レートの変動がなく、手数料が格安なMUFGコインの方が便利です。
ブロックチェーン技術を利用して格安の手数料で決済が可能なMUFGコインでの決済が普及したら、浮いた手数料の分がポイントや割引などの形で消費者に還元される可能性があります。外国の銀行が発行する外貨に固定された仮想通貨と交換すれば、格安の手数料で外貨両替ができるようになる可能性もあります。
発行者が存在しないビットコインやその他の仮想通貨でさえも、世界中で価値が認められています。一般的に信用されている大手銀行が発行して法定通貨により価値の裏付けを有する仮想通貨であれば、日本国内ではビットコインよりも高く信用されるはずです。
本格的に通貨として利用することを想定しているMUFGコインは、R3コンソーシアムに加盟する銀行の中でも初の試みです。もしも東京三菱銀行が発行する仮想通貨が成功すれば、他の銀行や金融当局が類似の仮想通貨を発行するようになる可能性があります。

まとめ

東京三菱銀行は実証実験を経た後に、2017年度中にMUFGコインを本格的に運用することを目指しています。預金者または一般の人がMUFGコインを利用することが可能になれば、交換レートの変動を一切気にしないで格安の手数料で振込を行ったり、インターネットショッピングなどの決済などに利用ができるようになります。銀行もシステムの構築・運用経費の節減ができるので、コストを削減した分が預金者へのサービスの充実のために利用される可能性があります。